やまごもれる美し国の物語! 唐橋史著『出雲残照』 

2013.04.02.Tue.08:41
映画を一本見終わった後のような、満足感でいっぱいです。
胸にしっかり錨をおろされた気分で、しばらく余韻にひたっていたいと思いました。
「出雲残照」唐橋さんのサイトですでに拝読していたのですが、文庫版を通読後、やっぱりおもしろい! と思いました。
語り部は張旦(ちょうたん)という大陸の人。
彼は戦で妻子を失い国を捨て、船出したもののあらしにのまれ、イズモの地にたどりつきます。そこは山の恵みも海の恵みも豊かな土地で、イズモタケルと呼ばれる王が支配するクニ。まさに桃源郷だと張旦は思いますが、後継・外交にまつわる種々の問題があり・・・・・・。
張旦は医薬の知識でタケルを助けます。しかしいつしか思いがすれ違ってしまうのが切ないです。

文章は重厚で、古代の姿がしっかりと描き出されています。血が通った人々が、たしかにいるのです。腰をすえて一気読みなさることをおすすめします。

イズモタケルのイメージが、変わりました。
イズモをすべるタケルは思慮深く、苦悩を眉間にきざみ、自らをクニに捧げ尽くしているように思えました。失って惜しいものなどないかのようです。
外敵から人々を守るためには傷を負うこともいとわないタケルは、まさに、ひとつの理想の体現者に違いないのですが、強大なヤマトの影から逃れることができません。

また、ヤマトタケルのあやしいまでの美しさ、危うさに張旦ならずとも引きつけられます。
父に疎まれながら、幼い頃の思い出にすがり父の為に戦うヤマトタケルの姿と張旦の行く末を見届けてほしいです。
「私は、これが、ヤマトか、と思った」という一文が、じっしり重いです。

「それからのチタリ」では、景行天皇崩御のあとの朝廷での権力争いが描かれています。政争から身をひいたチタリは、ある出会いがきっかけで御座争いの渦中へと呑み込まれて行きます。張旦とチタリはすごく似ていると感じました。

「息長帯比売」は、采女の阿古(あこ)の視点から語られる物語。タケルの血脈は綿々と受けつがれていく。大王の御子を宿し、新羅征討へと赴く息長帯比売を眺める視線に、すべてを持つ者への賞賛とある種のおそれが見て取れます。

色々書きましたが、結論は古事記好きの方はぜひ読んで! ということです!!

 
唐橋さんのサイト史文庫はこちら
ご本はこちらからも購入できるようです!
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