12/31 空色 もてる×まかない

2012.12.31.Mon.04:07


 花かんむりを捧げられて、稚羽矢は目をみはったが、すぐにうれしそうに受け取った。
 娘たちは笑いさざめきながら、春の野を色とりどりの衣でにぎわしている。狭也は少しはなれたところからそれを眺めて、息を吐いた。
 稚羽矢は人々になじむようになってきた。
 うれしい、よかったとは、思う。 
 でも、気が気でない。誰にも明かせないことだが、少し見回しただけでもきれいな花はいくらでもあるし、稚羽矢がひとたび望めば、つむのは思いのままなのだ。
 そんな気持ちにならないほうがおかしいと、狭也は少々くさくさした気分で考えた。
「割り込んでいけば?」
 ひざに名も知らぬ花を落とした鳥彦は、そのまま近くの木にとまった。若芽ふく枝がしなる。
 首を横に振ると、狭也は苦笑した。
「いいのよ」
「そうして座っていて、楽しいの。ひとりでさ」
 鳥彦は羽をめいっぱいひろげてみせた。青空に闇がさす。
 烏の羽は、どうして夜の色をしているのだろう。
 いつか、稚羽矢は狭也に手枕をしながらそうつぶやいたことがあった。
 狭也の髪も、夜の色だねと。
 変わらないわ、おんなじよ。そう言ったら、稚羽矢はしばらく考えたあと、まじめな顔つきをした。
 ちがう。あなたのは特別だ。黒より濃い、闇の色だ。こうしてふれていると、安らぐ色だ。
「狭也、ごらんよ」
 遠くで稚羽矢が手を振っている。
 狭也は、ほほえんで、袖を大きくふりかえした。
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