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12/30 薄紅(現代) 32対64×戦乙女

Category薄紅天女 二次

 日差しのまぶしさに目がくらむ。
 青い空には雲もなく、夏の海はおだやかに潮騒をひびかせている。
「どう考えても、分が悪いな」
 パラソルのした、うんざりした藤太の言いように、阿高はうなずいた。
「あっちは64、こっちは30ちょっとだ。まあ、すこし考えても勝ち目はない」
「いいえ、負けません!」
 フラッグを砂にざん、とさした鈴は、胸を張って声を上げた。誰のものか、麦わら帽子が風にとばされていく。
「阿高、ウオームアップよ。休んでいるひまなんてありません」
 声の主のほうは、絶対にみられない。見たら最後だ。
 阿高の反対を押し切って、目も当てられない水着を選んだ鈴は、どういうわけか知らない子のようでまともに目も合わせられない。
「おまえ、それを着るくらいなら、おれはもう口をきかない」
「どうしてですか? 似合わない?」
「そういう問題じゃない」
「きらいなの?」
「だから、そういうことじゃ」
「じゃあ、いいということ」
「・・・・・・勝手にしろ!」
 というわけで、本当にかんべんしてほしい超ビキニに、うすでのパーカーを羽織っただけの姿で鈴は砂浜に立っている。
「最初から負けると思っているの? もとはといえば、阿高が言い出したことなのに」
「知るかよ。砂浜で騎馬戦なんて提案、だれも乗るはずないって・・・・・・」
「日下部のやつらは、勝つ気でいるよ」
 藤太がためいきをこぼしながらうめいた。
 竹芝と日下部、合同の海水浴で何も起こらない方がおかしいのかもしれなかった。若者たちは腕っ節にものをいわせる機会をのがすはずがないし、臆病者とそしられるのも不本意なのだ。
「竹芝は精鋭さ。負けやしないけど・・・・・・」
「女子が将というのが、大問題だよ」
 男子が馬になり、女子がその上で麦藁ぼうしのかぶとをかぶり、奪い合う。
(ほんとに、楽しいだろうな)
 うんざりして、阿高は吐き気すら催してきた。 
 こっちの気持ちなどしらないで、鈴はのんきなものだ。 
 浮き輪をわきに挟んで、阿高にびしっと言いさした。
「わたくしの馬になるのです、勝ちたいのなら」
 かんべんしてほしい。逃げられるものなら、そうしたい。
 でも、ほかの誰かが馬になるのもいやだ。絶対いやだ。
「・・・・・・あきらめてうんと言えよ。これは、運命だ」
 藤太は、心底からのあわれみをこめた目をして、阿高の肩をたたいた。
 その顔がほんの少しだけ笑いにひきつっていたのを、阿高は一生忘れまいと思った。
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