スピーカーからきれぎれの節回しが聞こえてきた。
「あれはなんだろう」
「気になる?」
 軽トラックがのんびりと売り歩くのを呼び止めると、ヤキイモをひとつ買った。わるいことに、持ち合わせが足りない。
「稚羽矢、百円持ってる?」
 ポケットをごそごそ探った稚羽矢は、無造作に小銭をつかみだして見せた。
「割り勘ね」
 二つに割ると、ほかほかと湯気がたちのぼった。いい匂いがする。片方を渡すと、とまどったように稚羽矢は見返してきた。
「やいた、いも? はじめてみた」
「おいしいわよ」
 公園に寄り道して、だれもいないベンチに座って食べはじめた。はじめは熱さと格闘していた稚羽矢も、一口かじると気に入ったようで、少し焦げたところも、皮ごと食べてしまった。
 指をなめながら、稚羽矢はじっと狭也をみつめた。
「もっとほしいの?」
 ヤキイモを見られているとはわかっていても、なんとなく食べづらい。
稚羽矢はごくんとのどをならした。何も言わずに手を伸ばしてくる。
「だめ。あげない」
 食べかけを取られるのも恥ずかしい。稚羽矢の胸をおしながら、もう片方の手はヤキイモを死守するため高くかかげた。
「だめ」
 大きな手が、頬にふれた。と思うと、あっという間に顔が真ん前にやってきて、唇がふれあった。はしについていた小さなかけらをなめ取られたのだ。狭也は飲み下しそこねたいもで、しばらくむせた。背をたたいてくれるのはありがたいが、それどころではない。
「おいしそうに食べるね」
 やっと落ち着いた頃、稚羽矢は感心したように言った。
「半分にしたのに、あなたのほうがうまそうに見えた。味は同じようだけど。へんだね」
 ささやく声に鳥肌が立つ。
「もういちど、食べてみて」
 稚羽矢は無邪気にほほえんだ。
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りえ

Author:りえ
基礎絵本セラピスト®
妖怪博士(中級)
漢方養生指導士(初級)

養生とは、生命を養うこと。
健康を保ち、その増進につとめること。

絵本セラピーで心をほぐし、ときに妖怪でほんわかし。
漢方の考え方で身体をやしなっていきます。

無理しない、頑張らない「養生」日記です。

古代日本好き。


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