12/24 薄紅 雄志×桐箱

2012.12.24.Mon.04:07


 長櫃をあけ、ごそごそさがしものをしている鈴を見かけて阿高は声をかけた。
「どうした?」
 手を止めて顔を上げた鈴は、頬を染めていた。
「なんでもありません」
 視線をうろうろさせるのが、あやしい。
「おまえがなんでもないというときには、たいてい何かあるんだ」
「わたくしを信じないの?」
 阿高は鼻を鳴らした。びくっとするところが、なおあやしい。
 桐の長櫃には着物がしまってある。半分は阿高の冬着で、もう半分は鈴のものだった。竹芝にかえってしばらくは、着古しをわけてもらい、過ごしていたのだった。
「お下がりじゃないものも、欲しいだろう」
 着物の一枚くらい、なんとでもしてやれる。
 鈴は首を横に振った。
「これをね、解こうかと思っていたの」
 それは薄い紅色をした冬の衣だった。気に入って、ずいぶん大切にしていたのを知っているだけに、阿高は首を傾げた。
「解いて、どうする?」
 うつむいた鈴は口も聞かない。しばらく見下ろしていた阿高は、思い当たることがあって、急いでしゃがみ込んだ。
 手を取られた鈴はびっくりしたように目をみはった。
「もしかして、あれか。あの・・・・・・例のあれ、なのか?」
 見つめ合うと、鈴はとうとつに吹き出した。阿高の手を、鈴は自らのはらにあてた。ふくらんでもいない。ぺったりしている。信じられない。
「ほんとうか?」
 阿高は、祈るような気持ちで念をおした。
「・・・・・・はい」
 鈴はやさしく、けれどじつに頼もしく笑んで見せたのだった。
 
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