12/19 空色 ふるわない×ぺたぺた

2012.12.19.Wed.04:07


 今まで這ったり、ころころころがったりしていたのに、人と同じく歩き出した。すくなくとも、稚羽矢にはたいへん急なことに思えた。
 ぺたぺた、よちよちと歩く幼い子は、見るからにあやうい。
「稚羽矢、手を出してはだめよ」
 両手をもみしぼりながら、狭也がささやいた。まるで自分に言い聞かせているかのようだ。
「じきに、空も飛ぶかもしれないね」
 自分では寝返りもうてなかったのに、いつのまにか這って足下にいたときは本当に驚いた。今はもう助けもなしに歩いている。じきに自由に駆け出すだろう。
 そうしているうちに、地をけって飛び上がるかもしれない。
「飛びはしないでしょうけれど・・・・・・すこやかに大きくなってほしいわね」
 狭也は声を上げて笑ったが、とうとう転んだ子にあわてた様子でかけよった。
 どこかぶつけたのか、幼子はあやされてもなかなか泣きやまない。
「よし、よし」
 狭也の腕から子を抱き取ると、稚羽矢は汗ばんだちいさな体を高くかかげた。
「どこからそんな大きな声がでる?」
 体を揺らしてやると、じきに甲高い声をあげて笑い出した。稚羽矢もつられて笑った。
「大きくおなり」
 稚羽矢はつぶやいた。
 幼子もこの国も、歩き出したばかりだ。もろく、かよわい。
(だからこそ)
 おおきく、つよく育てと願いたくなるのだ。
 
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