12/14 白鳥 雀×ありがとう

2012.12.14.Fri.04:48


 ほんとうにほんとうの秘密は、雀に聞かれてはいけないよ。
 秘密はあっというまに秘密じゃなくなるからね。

 その子は、たいそうおしゃべりで、雀というあだ名がついていた。
 たいていの女の子をかわいいと思える菅流だが、この子だけはどうも苦手だった。菅流がどこの娘に声をかけたとか、ちょっと遊んですぐに逃げたとか、そうしたことまで、そこかしこに触れ回ってくれるからだ。
 根も葉もなくはないものの、悪い噂を耳にしたという娘に袖にされることも少なくはなく、菅流は自分の軽薄さをうらむより先に、雀をうとましく思ったのだった。

 ひらひらと風に乗ってなにかが飛んでくるのを見つけたのは、里のはずれの道を一人で歩いていたときだった。
 布の切れ端かなにかが、菅流のほほをかすめて飛んでいった。
「だれか、それをつかまえて」
 松林の影から飛んできた女の子の声に、菅流はがぜんやる気になると、布を追って走り出した。うまいことにちょうど風がやんだ。
 木の枝に引っかかった布を取ろうと、木に登った菅流は、あと少しというところで足を滑らせ、下に落ちた。布をつかんだはいいが、恰好が付かない。立ち上がろうとしても、足首をひねったようで立ち上がれないのだった。
「あの・・・・・・大丈夫?」
 菅流は顔をしかめた。雀がそばに立っていたのだ。
 きっと、木から落ちたことも言いふらされるに違いない。
 布を突き出すと、菅流はよろけながら立ち上がり、びっこを引いて来た道を戻った。

 次の日、遊びにも出られずおとなしく家の仕事にいそしむ菅流のもとに、やけにひんぱんに女の子が顔を出していく。それも、みんななにかしらおみやげを持って。果実に、菓子に、花束まで。あっという間に、贈り物は山になった。じいちゃんが目を丸くしたほどだ。
「大丈夫? まだ痛む?」
「かわいそうに。はれてるんじゃない」
 なかには、菅流を袖にした子もいた。平気な顔で礼を言ったが、なんとなくおかしくて、一人になると菅流は吹き出した。

 雀の顔がちらつく。足の痛みもなにほどのものか。
 つくりかけの管玉を日にすかしてみながら、菅流はほほえんだ。
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