12/9 薄紅 重たげ×能力

2012.12.09.Sun.05:38
「邪魔だろう」
 阿高は、目にかかっている鈴の髪を、ひっぱった。
「大丈夫」
 手ぐしでさっと耳ばさみするが、少し下を向くと落ちてきて、やっぱりすぐに目元がかくれてしまう。
「そいでやるよ。すっきりするぞ」
 小刀を取り出すと、阿高は鈴を座らせた。



「もっと切って、阿高」
「もう大丈夫だろ」
 これ以上切ったら童子みたいになる。ところが鈴は納得しないのだ。
 髪がぱらぱらと落ちるのが、どうも楽しいようなのだ。
 阿高はうなった。
「なあ、鈴。おまえ、これ以上短くしたら、ひたいが出るぞ」
「いい」
「ひたいがでたら、なあ」
 鈴は首を傾げた。
「おまえのそのまあるいおでこが目につくたび、おれが笑ってしまうだろう」
「阿高」
「おまえが童子みたいな顔をさらして、そこらをうろついているのを思い浮かべるだけで、笑いそうになる。おれを笑い死にさせるつもりか」
「・・・・・・そんなに、おかしい?」
 ぽんと肩に手をおいて、深くうなずいてみせた。
 ほんとうは、困るのだ。
 きれいな白いひたいをさらしたままにされたら、いつだってそこに口付けをしたくなる。
 ぷるぷるふるえた鈴は、唇をかんだ。
「なら、やめます」
 残念そうな声だ。
「そうしとけ」
「阿高、またこうしてそいでね。あなたに髪をさわられると、とても気持ちがいいの」
「おい、阿高。なにしてる?」
 藤太がきゅうに顔を出し、阿高はやましいところを見られたわけでもないのに、ぎくりとした。
「あー!!」
 手が滑り、けっきょく鈴の前髪は、だいぶ短めになってしまったのだった。
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