12/5 白鳥 みどりこ×疲労感

2012.12.05.Wed.05:49


「あの子、もう菅流から離れないつもりだぞ」
「やけるな、ああちくしょう」
「うらやましくてたまらない」
 菅流は渋面をして、足下の小石を蹴った。
「おい、おまえら、いい加減にしろ」
 にやにやする面々を前にして、菅流はため息を吐き出した。
 女の子を抱きしめるのは大好きだが、衣をちいさな手でひっぱり、ちゅうちゅう吸おうとされてはかなわない。
 心づくしのもてなしの席で、ほかに気になるかわいい娘もいるというのに、赤子の世話を押し付けられては身動きがとれない。
「お子さんがいらっしゃるのですか」
 そっと肴をおいた娘が、にっこり笑ってそうたずねてくる。
「そんなわけがない」
「まあ、ずいぶん抱き方が手馴れておられるので」
 あいまいに笑い返すと、悪友どもがちゃちゃをいれた。
「菅流があわてているぞ」
「みものだな。おかしいなあ」
 ひとごとだと思って、飲んだり食ったり。恨めしい目つきにもなる。
「十五年後に会いたかったよ」
 赤子のほっぺたをつん、とつつく。きゅうに動きをぴたりと止めたと思えば、なんとなく生ぬるい感触がじわりと……。おしめが濡れている。
「うわ!」
「みんな、みろ。やっぱり菅流は子どもには勝てないとみえるな」
関連記事
コメント

管理者のみに表示