「そんなに信じられないのなら、見せよう」
 稚羽矢はこともなげに言った。
「見せるって、どうするつもりなの」
 あくびをかみ殺しながら狭也が言うと、稚羽矢は空を指さした。
 ずいぶん早くに起こされて、まだ寝ぼけ眼をした狭也は、つられて空を見上げた。
 夜が明ける。山の端からゆっくりとのぼってくる日の光が、闇の中にまどろんでいたものたちを揺り起こす。
「豊葦原が島つ国だということを、見せてあげる」
 胸元から取り出したものを見て、狭也はとがめる目つきをした。
「稚羽矢、何をたくらんでいるの」
「何も。さあ、おいで」
 狭也の手を取って、つよく引き寄せた。髪に鼻をもぐらせて、稚羽矢は笑った。水の中に落ちたような浮遊感とともに、狭也の悲鳴があたりに響いた。



 風にあおられた髪は、ぼさぼさだった。真っ赤になった目をみひらいて、狭也はうらめしそうに稚羽矢をにらんだ。
「島国だったろう」
 鳥が飛ぶのより高いところから見渡さないと、豊葦原が島つ国だということはわからない。
「だからって、あんまりだわ。こわくて死にそうだったのよ。息もできないし!」
 狭也は唇をかみしめ、小さな声でつけくわえた。
「でも、きれいだった。日はひとしくこの豊葦原を照らすのね。毎日毎日、かわることなく」
 恥じいるように顔を背けた。
「遠くから眺めると、知っていたはずのものが全然ちがって見えるのね」
 腰が立たなくなってしまった狭也を、稚羽矢はなんとか横抱きにした。しがみついてくるのがうれしくて、にっこりと稚羽矢は笑った。
「礼にはおよばない」
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りえ

Author:りえ
基礎絵本セラピスト®
妖怪博士(中級)
漢方養生指導士(初級)

養生とは、生命を養うこと。
健康を保ち、その増進につとめること。

絵本セラピーで心をほぐし、ときに妖怪でほんわかし。
漢方の考え方で身体をやしなっていきます。

無理しない、頑張らない「養生」日記です。

古代日本好き。


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