勾玉ゆくとし くるとし7

2011.12.31.Sat.23:48
23:48

「まもなく新年か。早いものじゃな」
「ええ、本当に。おばあさま」
 お茶を湯呑に注ぎながら、一族の長たる人を豊青は上目づかいでみつめた。
「若いものは元気なことだ。疲れをしらない」
「ええ、本当に」
「橘にとっても、先方にとっても、またとない良縁がととのったのは喜ばしいことじゃな。さて、つぎは、象子がゆくか、遠子がゆくか。それとも、狭也か。・・・・・・豊、そなたもまだまだ引く手あまただろうに」
「いいえ、わたしはおばあさまのおそばにいたいのです」
「小倶那が気にかかるか?」
 老いているとはいえ、この人をあなどれる者はない。少しの変化にも注意をはらい、人の心の動きまでも見透かす瞳の前では、どんな嘘も役に立たない。
「いいえ、けっしてそんなことは」
 豊青は、さらに消え入りそうな声で言った。
「遠子さんのように、元気に何もおそれることなく振る舞えたらと思うことはありますけど。それでも、うらやましいと思うばかりです」
「遠子は、とくべつ元気な娘だ。物事の暗い面にばかりひきつけられる小倶那とは、対の性格。だからこそ、よいのだ。無理やりにでも、明るいほうへ引っ張っていくことだろう」
「ええ、本当に」
 少しの胸の痛みを押しかくして、豊青はうなずいた。


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