勾玉ゆくとし くるとし6

2011.12.31.Sat.22:01
22:00

「どれがいい?」
 雪の積もった自販機の前で、遠子はきいた。
「うーん、あったかいおしるこ」
「おしるこ?」
 聞いておきながら、いやそうな顔をする遠子に、小倶那はため息をついた。
「なんでもいいよ。きみの好きなのにすれば」
「じゃあ、ココアね」
 小銭を入れて赤く点滅するボタンを押すと、静かな公園に缶の落ちる音が大きく響いた。
 ベンチの雪を払って腰を下ろすと、ココアを一口飲んだ遠子がほほ笑んだ。
「おいしい。小倶那も飲めば」
 湯気を立てる缶を受け取り、小倶那は仕方なく飲んだ。あまり好きではないが、遠子がおいしいというのなら、それで十分だと思う。それでも、自分の飲んだ缶をいっさいのためらいもなくよこす遠子に少しがっかりして、何がそんなに腹立たしいのかわからないまま、小倶那はつぶやいた。
「やっぱり、おしるこがよかった」
「二人で飲むと、二倍おいしいような気がするでしょ」
「あんまり、しないけど」
「するの」
 遠子はあいかわらず、めちゃくちゃだ。
「小倶那はちっともかわらないわね」
 わかったような顔をして、わけのわからないことを言う。でも、ふしぎと嫌だと思ったことはない。こういうのが、気が合うということなんだろうか。
「それを言うなら、ぼくだってきみに言っておくことがある」
「なによ」
「遠子はメールの返事が短すぎるよ。もうとっくに使い方に慣れてるはずなのに。読み終わるのに、一秒もいらないって、どういうこと」
 了解。承知。電話する。ときには、! とか ? だけの返信もある。 
「だって、打ったり消したりしてるうちに、眠くなったりするんだもの」
「ふうん」
 小倶那は冷めてきたココアをぐいぐい飲んだ。
「ちょっと。ひとりじめしないでよ。きょうだいは、分かち合うべし!」
 小倶那はこみあげてきた怒りのままに、声を上げた。
「ぼくはきみのきょうだいじゃない」
 遠子はびっくりしたように見返してきた。
「じゃあ、何?」
 ここですでに怒りはしぼみ、情けない心境だった。遠子にとって、小倶那はいつまでもきょうだいなのだ。
「全部言わなきゃわからないのか。遠子って本当に子どもだな」
「何よ、じゃあ、小倶那はどれだけ大人だっていうの」
「知りたい? ぼくの変わったところを」
 小倶那はうめくようにつぶやいた。
「中途半端だよ、ぼくは。きみのことなんか考えずに、ぼくの好きなようにしたいときだってある」
「遠子がじゃまだということ」
「そうじゃない」
 小倶那はもどかしい思いで、目をしばたく人を抱き寄せた。
「こういうことだよ」
 遠子はおとなしくされるがままだったが、近くで見つめあったとき、本当にふしぎそうな声でささやいた。
「・・・・・・どういうこと?」


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