勾玉ゆくとし くるとし2

2011.12.31.Sat.20:15
20:15

「おまえさんは、なんと、高倉のぼっちゃんか」
 伊吹おじさんの大きな手のひらで肩をばちんと叩かれて、稚羽矢はむせた。
「どうりで、余裕があるというか・・・・・・少々抜けているというか」
 大晦日の夜も一人で過ごすという稚羽矢に、狭也はまったく同情しきっていて、迷うことなく本家につれてきた。それがよかったのか、わるかったのか。
 稚羽矢はおじさんたちに囲まれても、いつもの通りだ。狭也はすこしおかしくなった。
 どこにいても、このひとは変わらないのだろう。
「雪・・・・・・?」
 稚羽矢は、首をかしげた。
「雪合戦だ。知らないのか」
 一瞬の間のあとに、おもむろに立ち上がったおじさんたちは、信じられないことに雪の積もる庭に下りて、雪だまをつくりじめた。
「よし。みていろよ」
「そっちが赤で、こちらが白。陣地に分かれて雪玉をぶつけあうのだ」
 吹き込んできた冷たい風に身震いをすると、狭也は声を上げた。
「稚羽矢は?」
 引っ立てられた人のように半分引きずられながら、庭におりた彼は、目をまんまるにして、飛び交う雪だまをながめていた。そうしているうちに、顔にひとつあたって、よろけた。
「鳥彦! のんきに見ていないで、あの人を助けてよ」
 すぐそばにいたいとこに目をやると、のびざかりで狭也をもうすぐ追い越さんばかりの鳥彦は、首を振った。
「楽しそうだよ。やらせておけばいいんじゃない」
「標的だわ。おじさんたちも上着もきないで」
「全く、いい大人が」
 振り返ると、灰色のコートを腕にかけた人が、ため息混じりにつぶやいた。
「先生」
 鳥彦はあてにならない。教師なら、生徒を手助けするのになんの抵抗もないはずだ。
 ところが、科戸は一笑にふしただけだった。
「高倉は、団欒の楽しさを満喫しているようだな。いいことだ」
「先生?」
「放っておいてもかまうまい。いやなら逃げ出してくるだろう」
 狭也は言葉をうしなった。

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