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勾玉ゆくとし くるとし

Category現代勾玉
20:00

「大人って、ほんとにだらけようと思ったら、どこまでもぐうたらになれるのね」
 遠子が怒っている。それもそのはずだ。橘の本家に集まった親族は、夕方ころからおもむろに飲み始めた。酌をさせられる遠子は心底うんざりした顔つきで、くどくど説教されるのもわずらわしいといった感じだった。
 おつかいを頼まれもしないのに、逃げるように外へでた遠子は、小倶那が追ってくるのがわかっていたように、道の角で待っていた。
 うっすらと雪が積もった道に立つ遠子は、白いコートを着ていても暗い夜にとけ込んでしまいそうに見えた。
「ぐうたらなんて言ったらわるいよ。年末だもの、少しくらい羽目をはずしたっていいと思うけど」
「よくない。酒飲みは大嫌い。たばこもね。外で吸ってって言ってるのに」
 遠子は小倶那の髪に鼻を寄せた。
「小倶那もたばこくさい」
「ぼくは吸ってないよ」
 遠子は目を怒らせた。
「あたりまえよ。肺が苦い黒いのでべったべたになって、病気になっちゃうわよ。もし小倶那が吸おうとしたら、なんとしてでも止めますからね」
 小倶那は、遠子ならかならずそうするだろうと思うと、おかしくなった。
「おじさんの舌、いかれているんじゃないかしら。わたしの味付けしたお煮付けが、腐ってるっていうのよ」
「味付け、手伝ったの?」
 小倶那はおそるおそるたずねた。煮付けだけならいいが。
「おせちもよ」
 遠子が胸を張るのを眺めながら、明日が来なければいいと、小倶那は半分本気で考えた。
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