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ほいほい日記(しろたえ日記)

ほいほいには、「かけだし者」という意味があるらしい。いろんなところに首を突っ込み、かけだしていく人の覚え書き。

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これから2

「ルーンったら、せっかちね」 重たい扉を閉めたあと、フィリエルはじろりとルーンをにらんだ。 外に比べると、部屋の中はほっこりとあたたかい。「生まれたての赤ちゃんのお世話、少しはしたかったのに」「きみがいたら、おばさんがゆっくり休めないだろ」 外套を脱いだフィリエルは、ルーンの背中に呼びかけた。「ねえ、だんなさま」 動きを止めたルーンは、固い声で聞き返した。「ふざけてるの」「ふざけてなんかいないわ。...

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これから1(西魔女 ルンフィリ)

 雪のちらつく早朝。 外套をまとい厚ぼったいフードを目深にかぶったルーンは、足早に小道を下りおりた。 やぶの茂った見通しの悪い曲がり道をぬけると、ふもとの村にでる。 もうすぐ雪はやむだろう。 吐く息は白い。 たちこめた雲のすきまから、日の光が射している。溶け残ってかたく凍った地面も、帰る頃にはぬかるみに変わっているかもしれない。 昨晩は一睡もできなかった。へんに落ち着かなくて、ひとりきりの部屋が寒...

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休み時間(RDG)

 頼りになると思ったことは一度もない。 実の父だろうがなんだろうが、あんなやつ、絶対に認めたくない。 殴られても蹴られても、向かっていく気持ちだけはなくしたことがなかった。それを失ったが最後、自分というものはこっぱみじんに砕け散り、あの男の命令を諾々と聞く操り人形にまでおちてしまうことだろう。「わからないだろうね」 ばかにするように、あいつは言った。「この大役を、できることならわたしが仰せつかりた...

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岩姫異聞4

 蛇神はそれから姿を現すことはなく、岩長王はその野を耕し、田とした。すぐそばの小高い丘に吾多という村ができ、土地神をまつった社は数年もたたないうちに大きく建て替えられた。  秋の実りを祝う祭りは鎮守の森のそばの吾田野で盛大に催されるようになった。  岩長王は吾田の村に長をおこうとしなかった。王は頻繁に孫の伊吹をともなって村を訪れたが、かの人が思う以上に伊吹は吾多野で過ごすことを好んだのだった。 「振...

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たからの君

 草十郎は海からひときわ強くふきよせた風に、身をなぶられるような心地がした。 笛を吹きながらふと糸世を見やると、彼女は舞うことだけに心を傾けているようだった。 湿った風が長い髪を揺らした。草十郎は、笛に気持ちを込めるこめることができず、顔をしかめた。奇妙な衣は彼女のすうっとのばした背中と細い腰、しなやかな両の足をすっかりあらわにしていたのだった。 まぼろしではない。奇妙な衣を身につけていたとしても...