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ほいほい日記(しろたえ日記)

ほいほいには、「かけだし者」という意味があるらしい。いろんなところに首を突っ込み、かけだしていく人の覚え書き。

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りゅうの嫁取り10(終)

 鳥があちこちでさえずり鳴く声がする。 その下に、静かに流れる川があった。 懐かしい。どこかで見た覚えがある。(小白川・・・・・・) もしかして、千尋が幼い頃に失われたある川の、かつての姿なのかもしれなかった。 名も知らない草花がしげり、風に揺れている。虫たちの羽音が聞こえる。流れの中にすむ魚の姿が岩の陰に見え隠れする。 川面は日差しを照り返してきらめいている。千尋はそっと水の中に手を差し入れた。日の光...

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りゅうの嫁取り9

 ちょうちんを捧げ持った手をさげて、小柄な老人は手招きした。 頭を下げてから、何かものを言うひまもなかった。 老人はひょいひょいと石畳の道をそれ、小道をぬけていく。千尋はリンと顔を見合わせた。神妙な表情をした姉貴分をまえにして、するべきことは明らかだった。「あの、おじいさん」 千尋は半分駆け足になりながら、ようやく追いついた。大股で歩いているわけでもないのに、老人はすべるように道をすすんでいくのだ...

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りゅうの嫁取り8

 家を出たのは夕暮れの頃だった。 稲荷の社が見えてくると、千尋の足はぬいとめられたように動かなくなってしまった。水島に声をかけるのはやはり無神経だろう。「なにしてんの」 明るい声にはっとして横を向くと、赤い鳥居のしたに帽子を目深にかぶったすらりとした人がいる。「リンさん?」 男物をまとっているが、帽子のつばをあげて笑ってみせる顔は、千尋のよく知る人のものだった。「その格好・・・・・・」「ハクんとこに行く...

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りゅうの嫁取り7

 繰り返し、繰り返し考えた。 ハクを救う手だてがあるのなら、なんとかしたい。 けれど、すべてを捨てられるか。そう聞かれて千尋はたしかに迷ってしまったのだ。 これまでのすべてを捨てて、ハクのもとへ行く。そのあとどうなるのだろうか。 きっと、いまのままではいられない。外国へ旅行に行くのとはちがうのだ。くわしいガイドなんてない。心を決めて踏み出せば、もう戻ってはこられない。 そんな選択をして、ハクが喜ぶ...

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りゅうの嫁取り6

 リンは狐に身をかえて、夜の森へ駆けていった。 あとに残された水島家の人々が気の毒で、千尋はなんだかかける言葉もみつからなかったのだった。 後かたづけが終わったのは晩飯時だった。 電話を借りて家に連絡を入れたあと、千尋は通された居間で晩ご飯をごちそうになりながら、矢継ぎ早に質問を受けた。これにはだいぶ困ってしまった。「神隠しの一件で、おそらくふつうであれば交わるはずのないもの同士が、出会ってしまっ...