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ほいほい日記(しろたえ日記)

ほいほいには、「かけだし者」という意味があるらしい。いろんなところに首を突っ込み、かけだしていく人の覚え書き。

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咲く花2

「稚羽矢、なんでもうんと言ってはだめよ」 帰り道、狭也はつぶやいた。「わたしだって、なんでもうんと言うわけじゃない」 稚羽矢にみつめられて、狭也は目をみはった。「あなたを喜ばせたかった」 それきり、足に根が生えたように立ち尽くしてしまった。狭也はため息をつくと、思い切って稚羽矢の手を取り、横道へそれた。丘の上の公園へと続く小道には、秋の草が揺れている。急な階段を先に立って登ったさきに、緑色のペンキ...

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咲く花1

 呼び止められて振り返った狭也は、見慣れぬ女子生徒をまえにして目を丸くした。くせのない真っ黒なストレートの髪は、背中まである。白い顔に大きな目、ほほえんだ唇をしている。気後れするくらいだった。「あの・・・・・・」「狭也」 聞き慣れた声に、狭也は思わずじっとその人を見つめた。「わたしだよ。わからないの?」「ち、稚羽矢なの」「うん」「うんって、どうしてそんな格好をしているの」 うわずった声で狭也は言い、手を...

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チョコレートの日3

 朝、下駄箱に入りきらないくらいの袋やら箱が、ぎゅうぎゅう詰めになっているのを見て、阿高は靴を片手にしたまま呆気にとられた。「おれの靴入れはいつからゴミ捨て場になったんだ。いやがらせか」「それはチョコレートという食い物だぞ。ありがたくもらっておけよ」 藤太は平気な顔で、あふれて落ちたのをかばんに入れている。 それくらい知っていると言いかけて、阿高は頬をひきつらせた。いつになく、異様なくらい熱い視線...

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チョコレートの日2

「あの、どうやったらチョコというのは固まるの?」 鈴はほっぺたにチョコレートをつけたままで、途方に暮れたようにたずねた。「型に流したら、冷やすのよ」 千種は鈴の顔を見て笑いをもらした。千種の家の小さな台所は、甘いにおいでいっぱいだった。「このハート型、なぜ使わないの?」 袋に入ったままの大きなハート型が目についたので何気なく聞くと、あわてたように千種は視線を泳がせた。「いいの、これは、使わないから...

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チョコレートの日

「付き合っているというより、おもりみたいなものだと思う」 狭也は正直に言った。それを聞くと遠子はストローをかむのをやめて、納得いかないように頬杖をついた。駅前のファストフードの店内はこの時間帯にしてはすいていて、窓際の四人掛けを二人で気兼ねなく占拠できるのだ。 大きな紙袋のなかにはきれいな包装をされた小さな箱がぎっしり詰まっていて、それが二つともなると、けっこう重たい。 駅へ流れていく通行人を、見...