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さざなみの子守歌

 おいで、おいで、わたしのそばに おまえを包もう、あたたかなこの腕で ねむれ ねむれ、かわいい子 波音が聞こえたような気がした。 よく通るすんだ声と、折り重なるように響くさざなみの音は、現実のものではない。ここには、海はない。あの子も、いないのだ。 寒気が背筋をはいあがり、鹿矢は我が身をぎゅっと抱きしめた。体のしんまで凍えそうだ。冷たい川の流れに腰までつかり、青ざめた唇を震わせながら、鹿矢はため息...

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一品妃(おうひ)のお茶

 ちょうど里の入り口にたどりついたとき、風が強く吹いた。 思わず編み笠をおさえたほどの強風だ。 都から七日の道のりをゆき、船に乗り込み、凪海を揺られること丸一日。切り立った山が間近に迫ってくるようだ。港を離れると、あとは埃のまう道がどこまでも続くばかりだ。(なんと寂しいところだ)ひとつ、嘆息する。足下に何かが落ちているのにホバクは気づいた。かがんで手に取ったそれは、娘の髪を飾る細い布だった。 羽ば...

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真玉手、玉手さし枕き【イワノヒメ×オオサザキ】

秋の田の 穂の上に霧らふ 朝霞 いつへの方に 我が恋やまむ秋の田の 稲穂のうえにかかっている朝霞のように いつになったら わたしの恋は晴れるだろうか                                 (万葉集巻第二 八十八) あの日の野は、これほど晴れやかではなかった。 とつぜん降った春の雨に、髪も衣もすっかり濡れてしまったのだ。雨音もつめたい肌ざわりも、今となっては遠い幻だ。 あの...

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キスでさよなら

 キスでさよなら~魔女の恋  「第6回 らぶドロップス恋愛小説コンテスト 落選作」「ビジョっていうより、マジョだよな」 高校生の頃、そうからかわれたことが、いまだに忘れられない。「美女木 美紀」。自分の名前を好きだと思ったことは、一度もない。「美」が二つも入った名前のわりに、ぱっとしない容姿で、名前を言うたびによく笑われた。 真っ黒な髪は生まれつきの天然パーマ。のばせば多少はましかと思ったのに、き...

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官能部部誌ができました

官能部部誌 その1パブーさんで配布しています。ぜひご覧ください!乙女のグッとくるお話を追求する部活動、官能部初の部誌です。名古屋コミティアでは、「官能部」という名前がけっこう目を引いたようです。「へええ、なにこれ」という感じでちらっと見ていかれる方が多かったです。「おとなの部活動・・・へえ」的な。楽しいですよ、おとなの部活動は。名前買いしてくださる方も。気づくと、お買い上げくださったのは男性がほと...